KDS New Wave Story-21

KDS New Wave 第21話

Arkh.2Gのコンセプトと構造

Arkh.2G構想

水晶デバイスは、大きく2種類に分類されます。一つは、パッケージに水晶片を内蔵した水晶振動子、もう一つは、水晶片と水晶を振動させる電子回路(IC)を一緒にパッケージに内蔵した水晶発振器です。
近年、GPSや光通信、自動車の走行安全機器など、さまざまな用途において水晶デバイスの高周波数化/高精度化が求められており、水晶発振器の需要が拡大しています。しかし、需要増加に対応するために単純に工場を増やすだけでは、当社の重要課題(マテリアリティ)である「安定供給」と「環境対応」の両立は困難です。そのため、需要を満たす安定供給を実現するには、生産効率の向上が不可欠です。
生産効率を向上させるためには、既存の設備や工法の制約を打開できる次世代製品が求められます。その鍵となるのがArkh.2G構想です。
今回は、このArkh.2G構想について、2話にわたってご説明いたします。

急増する市場需要

 

Arkh.2Gの構造

Arkh.2Gは、セラミックパッケージにArkhシリーズの水晶振動子を内蔵した水晶発振器です。
従来品と比較すると、水晶片にあたる部分が気密封止まで完成したArkhシリーズの水晶振動子に置き換わっていることが大きな特徴で、これによって多くのメリットが生まれます。
一般的に、水晶片をセラミックパッケージに搭載するには、導電性接着剤を2か所に塗布し、水晶片を固定します。水晶振動部に直接触れる接着剤は、その塗布量や位置、硬さが極めて重要であり、高度な管理が必要です。
一方、Arkh.2Gでは、水晶片を完成したArkhシリーズの水晶振動子に置き換えることで、接着剤を水晶振動部に直接触れさせることなく搭載できます。そのため、接着剤の塗布における高度な管理が不要になります。

Arkh.2G比較

さらに、内蔵されたArkhシリーズの水晶振動子は、Arkh.2Gのセラミックパッケージによって2重にパッケージされる構造になっているため、接着剤のアウトガス影響を受けません。そのため、従来品と比較すると経年劣化が極めて少なく、高精度化にも対応可能です。

Arkh.2G比較2

Arkh.2Gの2重パッケージ構造は、高周波化にも大きなメリットがあります。高周波になると水晶片は薄くなるため、接着剤の応力の影響を受けやすくなるという課題が生じます。しかし、Arkh.2Gの2重パッケージ構造なら、応力をシャットアウトし、特性変動を抑えることが可能なため、安定した性能を維持できます。さらに、外観は従来品と同じであるため、従来品からの置き換えもスムーズです。

高周波化メリット

Arkhシリーズの水晶振動子を内蔵することによる製造上のメリットも多数あります。Arkh.2G構造は、製造工程の単純化によるBCP(事業継続計画)対応の強化や製造工程の自動化、歩留まりの向上など、総合的なコストメリットがあります。
次回、この製造上のメリットや生産効率の向上について、詳しくご説明いたします。

 

前話  一覧  次話