KDS New Wave Story-11

KDS New Wave 第11話

単位面積当たりのアウトプット「7倍」への挑戦

1by1工法の限界

今後ますます増加する需要に対し、生産能力を上げるために工場や設備を増加させると環境負荷は大きくなり、「安定供給」と「環境対応」は両立しません。

そこで必要になるのは「生産性の向上」です。従来の1by1工法(製品を1つひとつ加工する工法)で生産性を向上させるためにはタクトタイム(1つの製品加工にかかる時間)を短縮すれば可能となりますが、近年要求される製品はさらなる小型化と製造過程における高精度が求められており、1by1工法でのタクトタイムの短縮、生産には限界があります。つまり、生産性を向上するためには新たな設計思想の製品や製造ラインが必要となります。

 

1by1工法からウエハレベル工法へ

そこで当社では、従来の1by1工法からウエハレベル工法へ変革することで生産性の向上を目指しています。

ウエハレベル工法では各工程の加工を一括で処理することができ、工程の単純化や共通化された設備の規模を縮小することが可能となります。例えば、1by1工法でセラミックパッケージに水晶を接着剤で搭載し封止するまで工程ごとに装置が変わりますが、ウエハレベル工法ではこれらの工程を同じ設備で処理が可能となります。しかし、ウエハレベル工法を実現するには製品自体の設計思想も根本的な見直しが必要であり、この見直しにより誕生した製品が、当社オリジナルのキープロダクトである「Arkh(アーク)」シリーズです。

1by1工法-ウエハレベル工法

 

単位面積当たりのアウトプット「7倍」に向けて

Arkhシリーズはセラミックパッケージに導電性接着剤を用いて水晶片を保持するという従来の構造とは異なり、3層の水晶をウエハ状のまま貼り合わせるWLP(ウエハレベルパッケージ)技術を採用しています。このため、従来設備とは異なり、工程ごとに一つひとつの製品を移し替える必要が無くなるため、設備の台数が少なくなり、設置面積を大幅に削減することができます。さらに、1by1工法ではセラミックパッケージに水晶片を一つひとつ搭載して組み立てるため、生産能力は組み立て設備の能力に依存しますが、WLP技術はウエハ状のまま組み立てるため、一度の組み立てで生産できる水晶デバイスの数はウエハのサイズに依存します。つまり、より大きな水晶ウエハを使用することによって単位面積当たりのアウトプットを増やすことが可能になります。現在、当社は世界最大の6inch水晶ウエハを実現していますが、さらに大きな8inch化も進めています。

従来、低コスト化や生産規模の拡大を目的として生産性が追求されてきましたが、近年ではその目的は省力化や環境対応にシフトしています。当社におきましても、これら設備の設置面積削減やWLP技術により、単位面積当たりの生産能力を現行の7倍に増やし安定供給に対応しながら、工場の増築や設備の設置面積を抑えることでCO2の排出抑制にチャレンジしています。

アウトプット7倍