KDS New Wave Story-1

KDS New Wave 第1話

世界最大の人工水晶育成を目指して

人工水晶大型化の背景

エレクトロニクス技術の進展とともに水晶デバイスには小型、高周波、高精度などの価値が求められています。

水晶片の加工において、従来の機械加工ではこれらの要求に対応することが難しくなっており、半導体の製造にも使われている微細加工に適したフォトリソ工法(写真を現像する仕組みを応用した技術)を利用する場面が増えています。

フォトリソ工法では使用するウエハサイズが大きくなればなるほどウエハ1枚当たりの水晶片の取れ数は増加し生産性が向上することから、人工水晶の大型化が企業競争力を向上させる上でとても重要になります。

ウエハサイズと水晶片の取れ数

 

人工水晶大型化の課題

人工水晶は天然の水晶を高温・高圧下で、「種水晶(種子)」と呼ばれる板状の水晶に再結晶させ育成しますが、ただ単に育成時間を長くすれば大きな人工水晶ができるというわけではありません。大きな人工水晶を育成するためには、目的とするサイズの種水晶が必要になります。

従来は天然水晶から品質の良い部分を加工し種水晶としていましたが、サイズが大きくなればなるほど種水晶として使える天然水晶を得ることは難しく、種水晶を自然界から得ることは不可能といっても過言ではありません。

 

課題解決に向けたチャレンジ

そこで人工的に種水晶を大きくするため、「想像と創造」の精神のもと既存の種水晶同士の接合に取り組みました。
当初は育成工程において人工水晶にクラックが発生するなど失敗の連続でしたが、取り組み開始から約5年、遂にクラックが発生しない種水晶を開発しました。

しかし、この種水晶からすぐに大型人工水晶の育成が可能となったわけではありません。
種水晶の接合部分に結晶の乱れ(歪み)が発生し、最終製品の特性に影響が生じる可能性が浮かび上がったのです。
そこで、フレームシード法※1を用いて結晶の乱れがない/結晶欠陥の少ない種水晶へ品質改善を行いました。

水晶は特定の方向に成長しやすい/成長しにくいという性質があるのですが、フレームシード法での品質改善は種水晶を大きくするまで非常に時間がかかります。
何度も何度も育成を繰り返し、目的とする大きさの種水晶の完成までに接合成功からさらに約5年、取り組み開始からカウントすると合計10年以上もの歳月を要しました。

※1 フレームシード法
特定方向で中央部分を取り除いた種水晶を用いて育成を繰り返す方法

フレームシード法

 

世界最大の人工水晶の誕生、さらなる大型化に向けて

2022年6月、当社ではこの開発した種水晶を用いて世界最大となる6inchウエハ用人工水晶の量産に成功しており、当社量産品への展開を進めています。
そして、現在はさらに大型となる8inchウエハ用人工水晶の開発にも着手しています。

人工水晶の大型化、ウエハの大判化は、技術的/時間的な障壁が高く、今後の競争優位性を確保するためのコアテクノロジーとして非常に重要な取り組みであると考えています。
当社は、水晶ウエハの大判化によりコスト競争力を高め、技術面だけでなくコスト面においても競争優位性を確保してまいります。

6inch原石引き上げ 2~6inch原石