新製品情報

無逓倍/差動出力水晶発振器を開発

2010080201

 この度、当社(社長 長谷川宗平)は、無逓倍/差動出力水晶発振器シリーズ3機種「DSO323SK/SJ/SD」を開発しましたのでお知らせします。  近年、スマートフォンなど高度情報端末の利用やクラウドコンピューティングの拡大により、ネットワークの大容量化やディジタル機器間通信の高速化が進展しています。これらの機器間では高速ディジタル信号を正確に伝送するために小振幅差動ディジタル信号が用いられています。弊社では5032(5.0×3.2[mm])サイズのDSO533SK/SJを開発してこれらのニーズに応えてまいりましたが、このたび3225(3.2×2.5[mm])サイズを開発し、対応周波数の拡大や消費電力の低減など、性能の向上も図りました。  DSO323SK/SJ/SDの外形寸法は3225サイズ(3.2×2.5×1.1[mm])で無逓倍/差動出力水晶発振器としては世界最小*1です。容積は0.0088[cc]と現行の5032サイズ(0.0176[cc])と比べて50%小型化、実装面積についても8[mm2]と、同じく5032サイズ(16[mm2])と比べて50%小さくなり、高密度実装を可能にしました。  差動ディジタル信号は主に3種類の規格が存在します。DSO323SKはLV-PECLレベルに、DSO323SJはLVDSレベルに、DSO323SDはHCSLレベルに対応しており、DSO323Sシリーズとして3種類全てに対応して利便性を高めています。  対応周波数範囲は13.5MHz~170MHz(従来機種では100MHz~160MHz)に対応しており大幅に拡張しました。また、高精度加工技術を駆使して実現した新開発の高周波基本波発振の水晶振動子と、より小型化した1チップ発振回路による無逓倍発振出力により低ジッタを確保するとともに、消費電力もLVDS出力品で24mWと従来品の150mWに比べ80%以上削減することに成功しました*2。  鉛フリーや欧州のRoHS指令に対応しており、環境性能にも優れた水晶発振器です。

*1 2010年8月3日現在 当社調べ 無逓倍/差動出力水晶発振器において
*2 LVDSタイプの消費電力実力値の比較

[開発機種]
DSO323SK / DSO323SJ / DSO323SD
[特長]
  • 3225サイズ(3.2×2.5 mm)、高さ1.1mm(1.2mm max.)
  • LV-PECL、LVDS、HCSL 3種の差動ディジタル信号に対応
  • 対応周波数範囲:13.5MHz ~ 170MHz
  • 無逓倍発振出力により低ジッタ
  • 電源電圧:2.5V / 3.3V
  • 完全無鉛化(Pbフリー)、RoHS指令に対応
[主な用途]
サーバ、GE-PONなど光伝送装置、基幹通信基地局、WiMAX基地局
[生産開始時期]
2010年10月より
[サンプル価格]
価格@¥500 サンプル対応中
<生産数量>
1,000千個/月 
[電気的特性]

項目

規格    

条件

出力レベル

DSO323SK : LV-PECL
DSO323SJ : LVDS
DSO323SD : HCSL

 

公称周波数範囲

13.5 ~ 170MHz

 

動作電源電圧

3.3V±0.15V
または
2.5V±0.125V

 .

動作温度範囲

-10℃ ~ +70℃
または
-40℃ ~ +85℃

 

周波数許容偏差

±50×10-6
または
±100×10-6

常温偏差、温度変動、経年変化を含む。

消費電流

SK:45mA max.
SJ:20mA max.
SD:35mA max.

 OE="OPEN" or "H"
Vdd=3.3V

スタンバイ時電流

10μA max.

 OE="L" 発振出力停止状態

RMSジッタ

2.5ps typ.

 

ピークジッタ

22ps typ.

 

トータルジッタ

36ps typ.

BER=1×10-12

位相ジッタ

1ps max.

 Offset 12kHz ~ 20MHz

発振開始時間

2ms

 

スタンバイ機能

3ステート機能付

 

※ 上記仕様は、標準仕様の一部です。この他の仕様、または特殊仕様については別途ご相談ください。

<外観図>
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<用語の説明>

水晶発振器
周波数の基準源として精度の高い水晶振動子が広く使われているが、水晶振動子から周波数信号を得るためには発振回路が必要になる。水晶発振器は、水晶振動子と発振回路を組み合わせた商品で、使用者は発振回路を準備しなくても電源を与えるだけで周波数信号を得ることができる利点がある。

周波数許容偏差
公称周波数と実際の出力周波数との差を周波数偏差という。また、出力周波数は温度により変化するが、温度が変化しても、出力周波数の変化が小さいほど周波数温度特性が優れていると言える。温度が+25℃±3℃(常温)における周波数偏差を常温偏差と呼び、動作温度範囲(例-10~+60℃)における出力周波数の変化を周波数温度特性と呼ぶ。

小振幅差動ディジタル信号
ディジタル機器の信号レベルにはいくつかの種類があり、0V~電源電圧(多くは3.3V)の振幅で”0”/”1”を表すC-MOSレベルが最も多く使われている。これに対して高速にデータを伝送する必要のある場合は、小振幅差動ディジタル信号が使われる。 “0”/”1”を高速に切り替えるために振動振幅を0.3V~0.7V位まで小電圧化し、コモンモードノイズ(共通して混入する雑音成分)を除去するために、2つの差動信号(電圧を反転した信号)による伝送を行う。信号線は規定インピーダンス(通常は50オーム)で整合し波形の歪が発生しないようになっている。信号レベルによって、LV-PECL(Low-voltage positive emitter-coupled logic)、LVDS(Low voltage differential signal)、HCSL (High Speed Current Steering Logic)などがある。

無逓倍発振出力
所望の周波数を直接発振させて出力する水晶発振器の構成を言う。PLLなどの逓倍回路を使うよりも出力周波数のノイズレベルが低く高速動作機器で必要とされている。

低ジッタ
周波数の揺らぎが少ないことを表す。水晶発振器では周波数の揺らぎ度合いをジッタと言い、逓倍回路を使用するとジッタは多くなり高速動作機器には使用しづらい。

RoHS指令
Restriction of the Use of Certain Hazardous Substances in Electronic Equipment の略。   EU(欧州連合)が2006年7月1日に施行した有害物質規制で電気電子機器への特定有害物質の含有を禁止する指令のこと。規制対象となっているのはPb(鉛)、Cd(カドミウム)、Cr6+(6価クロム)、Hg(水銀)、PBB(ポリブロモビフェニル)、PBDE(ポリブロモジフェニルエーテル)の6物質である。2002年11月にEU(欧州連合)の調停委員会で合意された。