Arkh.3Gを内蔵し、小型、低消費電力化を実現したOCXO “Arkh.5G” の開発に成功
この度、当社(社長 長谷川 宗平)は当社独自の次世代水晶タイミングデバイスArkh.3Gをパッケージに内蔵したOCXO(恒温槽付水晶発振器)を開発しましたのでお知らせいたします。
2020年から第5世代移動通信システムである5Gネットワークによるサービスが始まり、「高速/大容量」「低遅延」「多数端末との接続」という特徴からさまざまなサービスや産業を革新すると期待されています。
5Gネットワークサービスは、従来よりも高い周波数帯を用いるため、電波の直進性や反射の影響により通信エリアの整備には膨大な数の基地局の設置が必要であると予想されます。さらに設置数が多くなるローカル5G基地局には、より小型、低コスト、低消費電力が求められ、使用されるタイミングデバイスはTCXO(温度補償水晶発振器)より高安定で、従来よりも小型、低消費電力化したOCXOが望まれます。
一般的なOCXOは内蔵した水晶振動子を一定の温度に保ち、水晶振動子における温度特性※1の影響を抑えることで高安定を実現しています。従来のOCXOは水晶振動子を含む発振回路にあたるコア部のサイズが大きいため熱容量や放熱量が大きくなり、多くの電力が必要でした。
そこで当社では、超小型のArkh.3G(発振器)をOCXOのコア部に使用した独自の構造により、従来よりも小型(7.3×4.9×2.0mm)で高性能なOCXOの開発に成功しました。Arkh.3Gは従来製品(世界最小クラス1612サイズの水晶発振器)と比較して体積比で85%以上小さく、厚みも1/2以下を実現した製品です。このArkh.3Gをコア部に内蔵することが小型化に繋がり、熱容量と放熱量を極限まで下げることを可能としました。また、従来製品のコア部は大気雰囲気下であることが一般的ですが、本製品は真空雰囲気下となっており熱対流の影響を受けにくいコア構造を実現しました。
このような小型のコア部は5.0×3.2mmサイズなど、さらなる小型化への展開に繋がります。また、パッケージの多重化による断熱効果の向上も製品サイズを維持したまま、もしくは僅かなサイズアップで実現できるため、製品サイズをキープしながら高精度化が可能になると考えています。今後は、これら製品ラインアップの拡充も予定しています。
また、従来のOCXOは構造の複雑さや部品点数の多さから、人作業による組立が必要となり、高コストで大量生産に向かない製品構造となっていました。これに対し、今回開発した OCXOは、シンプルな構造かつ水晶業界で汎用的に使われているセラミックパッケージを使用しています。これらは全自動ラインでの組立を容易にする設計であり、今後拡大する基地局市場に安価なOCXOを大量に供給することが可能となります。
■製品仕様と計画
型名 | DC7050AS | |||
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外形寸法 | 7.3×4.9mm 高さ2.0mm | |||
周波数温度特性 | ±30×10-9 max. | |||
消費電力 | 0.25W typ. 25℃安定時 | |||
出力周波数 | 5~100MHz | |||
サンプル対応 | 2020年12月以降 | |||
量産予定 | 2021年10月 | |||
用途 | 5G基地局、その他基準器 |
当社は2017年6月に従来製品と異なる新しい構造の水晶デバイス「Arkh.3G」の製品化を発表いたしました。Arkh.3Gは、従来製品で使用されるセラミックパッケージや導電性接着剤を使用しない構造です。当社が独自に開発したFine Seal技術により、水晶を母体とする3層のウェハを貼り合せるWLP(Wafer Level Package)を可能にし、小型/薄型/高信頼性を実現した製品です。
今回開発した製品は、Arkh.3Gの特徴である、超小型でアウトガスが発生しない無機材料のみによって構成された水晶振動子を使用することにより高性能化を図っています。
※1)温度特性
温度が変化した際、基準周波数(at 25℃)から周波数が変化するという、水晶が持つ物理的な性質
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