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なるほどThe水晶デバイス

なるほどThe水晶デバイス

水晶デバイスって何?

水晶デバイスは、スマートフォンなどの情報通信機器、ハイレゾオーディオなどのAV機器、自動車など、私たちの生活に身近な電子機器に使われています。

例えばスマートフォンは世界中の人たちとコミュニケーションを取ることができ、いつでもどこに居ても欲しい情報を入手することができます。この便利なスマートフォンは、電波を使って音声や情報を送ったり受けたりします。この電波の基となる基準信号を正確に、安定して作り出している部品が水晶デバイスなのです。

水晶の秘密

みなさんは「水晶」というと何を思い浮かべますか?水晶玉やネックレス、指輪などのアクセサリーなどでしょうか?古来より「水の精」とも呼ばれ重宝されてきた水晶ですが、美しさだけではなく、物理的にも様々な性質を持っています。

性質1:圧電現象・逆圧電現象

水晶は圧力を加えると電荷を発生するという性質を持っており、圧電現象と呼ばれています。逆に、電圧をかけると一定のリズムで振動する(変形する)性質も持っており、逆圧電現象と呼ばれています。1880年に圧電現象がキュリー兄弟により発見され、翌1881年には逆圧電現象がリップマンにより数学的に導かれ、キュリー兄弟により証明されました。

圧電現象  逆圧電現象

 

 

性質2:複屈折性

水晶に入射した光線を互いに振動方向の異なる常光線と異常光線の2つの直線偏光に分離させる性質です。この性質を利用した光学ローパスフィルタではデジタルカメラや監視カメラなどの画質低下につながるモアレと呼ばれる光学疑似信号を除去し、高画質化を実現しています。

moiré_01 被写体arrowmoiré_02 撮影後
(光学ローパスフィルタなし)
moiré_03 撮影後
(光学ローパスフィルタあり)
trivia豆知識  〜水晶の仲間〜
水晶はケイ素(Si)と酸素(O)からなる単結晶(SiO2)です。また、アクセサリーなどに使用されるアメジストやシトリン、ローズクォーツなども水晶の仲間です。
アメジスト
アメジスト
水晶に鉄イオンが含まれることにより、黄緑色の光を吸収するため紫色に見えます。
シトリン
シトリン
アメジスト同様、水晶に鉄イオンが含まれることによりますが、含まれる鉄の電子配置が異なるため青紫色の光を吸収し、黄色に見えます。
ローズクオーツ
ローズクォーツ
水晶にチタンイオン、マンガンイオン、鉄イオンが含まれることにより薄いピンク色に見えます。
ルチルクオーツ
ルチルクォーツ
二酸化チタンの針状結晶を含んだ水晶です。

 

水晶デバイスに欠かせない人工水晶

かつて、水晶デバイスには天然の水晶が用いられていましたが、天然の水晶は不純物が多く、大きさや品質にばらつきがあるなどの問題がありました。これらの問題を解決したものが人工水晶です。それでは人工水晶がどのようにして作られているのかをご紹介します。

オートクレーブと呼ばれる巨大な圧力容器にアルカリ溶液を充填し、上半分に種水晶(結晶配列に欠陥の少ない水晶の板)、下半分にラスカと呼ばれる天然水晶の原料を入れ、高温・高圧下で再結晶化させたものが人工水晶です。品種にもよりますが2~3ヶ月、長いものでは約6ヶ月の期間をかけて育成します。

オートクレーブ

trivia豆知識 ~オートクレーブ~
オートクレーブは戦艦の大砲の砲身を作る技術を応用して作られた、高温・高圧に耐えられる特殊鉄製の容器です。大きいもので内径650ミリメートル、高さは15mにもなります。

水晶デバイスができるまで

水晶がどうやって電子部品に変身するのでしょうか?水晶デバイスの中で、最も代表的な水晶振動子を例に、製品ができあがるまでを見てみましょう。

①水晶片の加工

水晶(人工水晶)は無色透明な結晶ですが、水晶には方向性があり、電子部品として機能させるため結晶軸を明確にする必要があります。この工程をランバード加工と呼んでいます。

synthetic_quartz_crystal_01人工水晶arrowsynthetic_quartz_crystal_02ランバード人工水晶

その後、目的に応じて結晶軸に対し必要な角度で切断し、研磨剤を用いて目的の周波数に研磨していきます。一般的に使用されるATカットと呼ばれる加工では、周波数は水晶の厚みと反比例の関係にあるため、研磨された水晶片は周波数が高くなれば薄く、低くなれば厚くなります。

quartz_crystal_chip水晶チップarrow水晶の厚みが厚いと・・・ wave_02
水晶の厚みが薄いと・・・wave_02

②周波数調整と洗浄

研磨剤を用いて加工した水晶片の表面には、小さなヒビなどの加工歪や汚れがあります。これらの加工歪や汚れを取り除くため、化学薬品を用いて水晶の表面を化学的に研磨・洗浄します。この作業では、水晶振動子の周波数調整も同時に行います。

③電極形成

加工した水晶片に金や銀などの金属膜で電極を形成します。この電極に電気を流すことで逆圧電現象により水晶片を発振させることができます。

電極を形成した水晶片電極を形成した水晶片

④水晶片の接着・封止

電極を形成した水晶片を、導電性接着剤を使ってセラミックなどのパッケージに固定します。落下や振動など様々な衝撃にも耐えるようにしっかりと接着された後は、100万分の1の単位で周波数をチェックしながら、周波数の最終調整を行います。その後、電極の酸化などを防ぐため、真空や窒素雰囲気下で封止されます。

synthetic_quartz_crystal_01水晶片をパッケージに接着arrowsynthetic_quartz_crystal_02組立完了!

⑤検査、梱包、出荷

目的とする特性の規格を満たしているか厳重な最終チェックが行われ、合格した水晶振動子が梱包され、出荷されます。

エレクトロニクスは便利で豊かな社会を築いてきました。1970年代に時計のクォーツ化が起こり、2000年代には電波時計が登場して、私達はより正確な時間を知ることができるようになりました。液晶TVが登場、そして2003年に地上デジタル放送がスタートして、薄型化された大画面でTVを楽しめるようになりました。デジタルカメラはフィルムを気にせず写真を撮ることができ、撮影した画像の楽しみ方も広がりました。さらに、自動車ではパワートレイン系、車両制御、ボディ制御などの電装化が進み、ナビゲーションなどの情報通信も加わって、自動運転技術も目覚ましい進化を遂げようとしています。水晶デバイスはこれらエレクトロニクスの進化に係り、そしてこれらの機器のなかで大切な役割を担ってきました。高信頼ICT(情報通信技術)基盤の整備とともに、医療や介護、農業などの領域にもICTが広がろうとしています。これらエレクトロニクスを支える水晶デバイスの重要性は益々高まりを見せています。