技術情報

2007年3月8日号 電波新聞『ハイテクノロジー』掲載

特集 移動体通信用部品技術

小型SMD温度補償水晶発振器の最新技術

  はじめに

 温度補償水晶発振器(TCXO)のメジャーなアプリケーションとして携帯電話は不動の地位にある。第三世代のシステムへの移行時に肥大化した携帯端末も成熟期に入り、設計の自由度が増し、薄型で軽量の端末が市場で見受けられるようになってきた。 また、今後大きく成長が期待されるアプリケーションとしてGPS(Global Positioning System/全地球測位システム)がある。GPSは米国が運用している衛星航法システムで、1995年に軍事用として運用がスタートしたが、比較的早い時期から民間でも利用されている。日本ではカーナビとして広く普及した。最近ではGPS受信機能を搭載した携帯電話の普及も急速に進んでいる。また、欧米でも持ち運びが出来るナビゲーション装置であるPND(Personal Navigation Device)の市場が急速に成長している。
 ここでは、この2つのアプリケ-ションに着目して、これらのアプリケーションが要求する性能及び、トレンドを技術的な背景をまじえ、大真空の対応と共に紹介する。

  小型化・低背化

 機器の小型化に対応するためにTCXOは小型・軽量であることが要求される。携帯端末用途では、現在3225サイズが広く普及し、2520サイズへ移行が始まりつつある。GPS関連機器では、5032サイズから3225サイズへ移行が加速している。
 大真空では、TCXOを小型化する上でのキーポイントである電子回路のIC化を業界に先駆けて取り組み、製品の小型化を進めて来た。大真空のTCXOの小型化トレンドを示す(図1)。9070サイズのTCXOで初めて回路のIC化を実現し、現在量産中の2520サイズに至る。容積比では実に1/30以上の小型化が進んでいる。特に5032サイズ以降に開発した小型製品に関してはシングルパッケージ構造(図2)を採用し、製品の低背化・低コスト化対応を一気に進めた。
 シングルパッケージ構造は、製造技術面では高い技術レベル・管理レベルが必用であるが、トータルアセンブリタイムの短縮が可能である等、そのメリットは大きい。
 現在量産中の2520サイズTCXO「DSA221SAシリーズ」を紹介する。外形寸法は2.5×2.0×0.9mm max. 容積は0.0045cc。 移動体通信機器のリファレンスオシレーターとして開発した小型TCXOである。外観図を図3に示す。シングルパッケージ構造を採用し低背化を実現した。周波数温度安定度は±2.0×10-6/-30℃~+85℃に対応する。

〔図1〕大真空TCXOの小型化推移

 

  〔図2〕シングルパッケージ構造

 

〔図3〕DSB221SA(TCXO)の外観図

 

 

  高精度化

GPS関連機器では、電源ON後、測位開始までの時間短縮・受信感度の改善・測位精度の向上と言ったGPS受信機の基本性能を改善する上で、TCXOの性能が大きく関与する。
 そのため、GPSに使用されるTCXOは広い温度範囲で高い周波数精度を維持する必要がある。また、実際のGPS受信機の中でのTCXOの環境温度は周囲のデバイスの発熱の影響でダイナミックに変化している。温度の変化に連動したTCXOの周波数の大きな変動は、受信感度の劣化・測位精度の劣化といった現象として現れる。そのため、GPSに使用されるTCXOでは、周波数温度特性の他に、周波数スロープ(単位温度あたりの周波数変化量)を規格として設定する。一般的には、周波数温度安定度:±0.5×10-6/-30℃~+85℃、温度スロープ:±0.1×10-6/℃ 程度の性能のTCXOが使用される。
 大真空では、テレマティクス等の車載機器への対応を考慮し、動作温度範囲を-40℃~+85℃まで拡大した製品 「DSB321SD」 を量産中である。温度特性例を図4に示す。

〔図4〕DSB321SDの周波数温度特性例

 

  低電圧化

 低電圧+1.8V(+1.7V~+3.0Vで動作)で使用可能なTCXO「DSB321SE」を開発した。従来のTCXOは、動作電圧の下限は+2.4V(+2.3V~+5.5Vで動作)であった。これを一気に+1.8V迄下げた。DSB321SEは、今後のGPS市場をターゲットとして開発した製品である。GPSを構成するICは、携帯電話、PNDの市場も視野に入れ、小型化・低消費電流・低電圧動作をトレンドとした開発が進められている。
 今後は、GPSの受信部を構成するICの多くが、+1.8Vで動作するようになる。TCXOの動作電圧を+1.8Vに対応することにより、GPSの受信部を構成する全てのデバイスが+1.8V単一電圧で動作できる。受信機のさらなる小型化、低消費電流化が可能となる。
 DSB321SE外観を図5に、電気的特性を表1に示す。 DSB321SEでは、周波数温度安定度の規格を緩和することでコストを低く抑えることを目標に設定し、複数のGPS-ICメーカーと共に開発を進めた。温度特性例を図6に示す。この温度特性を移動体通信機器向けの温度補償回路相当の回路規模で実現している。構造面では、大真空のTCXOの特長であるシングルパッケージ構造(鉛フリー・RoHS指令対応)を採用し、低コスト化を実現している。

〔図5〕DSB321SE外観図

 

 〔表1〕DSB321SEの電気的特性

 型名

 DSB321SE(TCXO)

 出力周波数範囲

 9.6MHz~40MHz

 出力周波数

 12.504/13/16.3676/16.369/16.8/18.414/23.104/24.5535/26MHz

 電源電圧

 +1.8V  (電源電圧+1.7V~+3.0Vまで動作可能)

 消費電流

 +1.1 mA max. (F≦15MHz)

 +1.3 mA max. (15

 +1.5 mA max. (F>26MHz)

 TCXO出力電圧

 0.8Vp-p min.

 TCXO出力負荷

 (10kΩ//10pF) ±10%

 周波数常温偏差

 ±1.5×10-6 (After 2 reflows)

 周波数温度偏差

(周波数Slope)

 ±1.0×10-6/-20℃~60℃  (±0.10×10-6/℃)

 ±1.5×10-6/-40℃~85℃  (±0.15×10-6/℃)

 周波数電源変動

 ±0.2×10-6/(+1.8V±0.1V)

 周波数負荷変動

 ±0.2×10-6/(10kΩ//10pF)±10%

 エージング特性

 ±1.0×10-6/year

 起動時間

 2.0 msec max.

 

 〔図6〕DSB321SEの周波数温度特性例

  今後の展開

 今回は、携帯電話・GPS市場に対しての大真空の取り組みを解説した。市場の動きを見ると、今回紹介したトレンドに対して更なる対応を進める必要があると考える。TCXOは更なる小型化を進める必要がありそうだ。高精度化に対しても、機器の小型化を考えると、よりダイナミックに変化する温度にも対応する必要があるだろう。低電圧化に対しても、移動体通信機器全般への展開も考える必要があるだろう。
 大真空は、今後も市場のトレンドを分析し、カスタマーの視点に立った商品をタイムリーに提供できるよう活動を続けたい。