技術情報
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2008年12月11日号 電波新聞『ハイテクノロジー』掲載

特集 高周波部品とモジュール技術

車載用3225サイズ水晶振動子の技術

はじめに

 カーエレクトロニクスは、自動車の安全性・快適性の向上のために欠かせない技術であり、その電子化は急速に進んでいる。
 安定した周波数を供給する水晶デバイスは、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機器、高品位テレビなど様々な電子機器に使用される重要な部品である。カーエレクトロニクスの分野においても、エンジンコントロールユニットなどの安全制御系、カーナビゲーションシステムなどの情報通信系と様々なシステム、アプリケーションに使用され、一台あたりの水晶デバイスの使用数は年々増加している。
 また、一般的な用途と比較して過酷な条件下で使用される車載用水晶デバイスには、高い信頼性が要求され、その中でも特に回路を構成するプリント基板と水晶デバイスとの接合箇所であるハンダ付け部の信頼性・耐久性が極めて重要な要素として注目されている。
 ここでは、車載用途で要求されるハンダ付け部の耐久性を向上させた小型・高性能な表面実装型水晶振動子について紹介する。

ハンダクラック対策技術

 近年、水晶デバイスはSMD化が進み、小型化・薄型化が急速に進展してきた。現在カーエレクトロニクスの分野で採用されている水晶振動子のサイズとしては、8045(8.0×4.5mm)サイズや5032(5.0×3.2mm)サイズが主流となっているが、今後は3225(3.2×2.5mm)サイズへと移行・集約されていくものと予想される。
 ハンダクラックは、セラミックパッケージの熱膨張係数に対してプリント基板(一般的にはガラスエポキシ材)の熱膨張係数の方が大きいために、外部の温度変化により接合部のハンダに応力が加わることで発生する。その後の継続的な温度変化によって膨張、収縮が繰り返されると次第にクラックが進行し、オープンレベルに達した場合に電気的導通不良や部品外れが生じ、デバイスの能力が発揮できなくなる(図1)。


 これまでのハンダクラック対策の技術としては、セラミックパッケージ内部の水晶片搭載部と外部ハンダ付け端子を金属片で一体化した「Jリード」と呼ばれる構造が実用化されている。
 この構造は、外部ハンダ付け端子とセラミックパッケージが分離した構造となるため、プリント基板とセラミックパッケージの熱膨張係数差によって生じる応力をハンダ端子部の自由度で吸収することで、ハンダ付け部にかかる応力を大幅に軽減できる優れた手法であり、8045サイズや5032サイズの水晶振動子において普及している。しかしながら、この手法は製品が小型化するほど技術的難易度が高くなり、大幅なコストアップにつながることから3225サイズへの適用は極めて困難と言わざるを得ない。
 すなわち、3225サイズ以下の水晶デバイスに対してはシンプルなデザインで、かつ低コストで、ハンダ接合部にかかる応力を緩和させる必要がある。
 そこで大真空では、セラミックパッケージの外部ハンダ付け端子の配置および構造を変更・工夫することで、ハンダ付け部に発生する応力を緩和させ、ハンダ付け部の耐久性を大幅に向上させた水晶振動子DSX320Gを開発した。

水晶振動子DSX320Gのハンダ接続端子の特徴

 これまでの3225サイズ水晶振動子の外部ハンダ付け端子は4端子の構造であるが、新しく開発した水晶振動子DSX320Gでは外部ハンダ付け端子を2端子構造とした。
 それらをベースの中心点に対して点対称となるように斜め対角位置に配置するとともに、その端子電極と相対するもう一方のベースの角部に電極端子が形成されない領域を配置した特殊な構造となっている。
 また、それぞれの外部ハンダ付け端子部にはメタライズを厚付け形状としたバンプ構造を採用している(写真1、2)。


 これらにより、セラミックパッケージとプリント基板との間に熱による膨張差が生じた場合、前述の端子電極が形成されない領域の存在により、効率よく応力を逃がすことができるため、ハンダ付け部へ集中する応力を緩和して疲労破壊を生じにくくする効果を生んでいる。
 また、ハンダ付け端子部に形成したバンプ構造により緩衝効果を高めつつ、プリント基板から浮き上がった隙間部分にハンダが溜まることで接合面積が増大するため、接合強度を高めることができる。
 さらに、従来機種である水晶振動子DSX321Gでは4箇所のコーナー部に配置したキャスタレーションを短辺中央部に変更し、キャスタレーション幅を広げることでハンダフィレットの形成を促進し接合強度を高めると共に、ハンダフィレットの視認性も大幅に向上させた。

DSX320Gのハンダ接合部の耐久性

 大真空では、前述のパターンの決定に当たって応力シミュレーションと実機による評価実験を併用しながら最適なパターンを見出した。
 応力シミュレーションの一例として、図2に熱衝撃印加時(+25℃⇒+125℃)にハンダ接合部にかかる応力を解析した事例を示す。


 図から、従来機種(4端子)では、ハンダ接合部に大きな応力が発生しているのに対し、DSX320Gでは、ハンダ部の応力が緩和されていることがわかる。
 これに対し、実機での実験により得られたDSX320Gと従来機種との冷熱衝撃試験による、ハンダ耐久性を比較した結果を表1に示す。表中の「×」はオープンレベル(破断)、「△」はオープンに至る可能性があるレベル、「○」はオープンレベルに至るまでに余裕があるレベルであることを示している。


 なお、大真空では、ハンダ接合部の耐久性を評価する指標として『クラック率』を採用しており、ある切断面における、ハンダ接合部の長さに対するクラックの長さの割合を判定基準としている(図3参照)。


 試験結果から、温度範囲 -40℃ ⇔ +125℃、鉛フリーハンダでの条件下において、従来機種では、2000サイクルの時点において、ハンダクラックがオープンレベルに至る可能性があるのに対し、DSX320Gでは3000サイクルまで印加した後でも余裕がある結果が得られている。

DSX320Gの生産体制

 DSX320Gの生産ラインについては、現有の設備をそのまま使用可能であり、既に安定供給体制が確立している。また、パッケージ内部に搭載する水晶片は従来製品と共通であることから、広い周波数範囲において安定した特性の製品を短納期で供給することが可能である。

むすび

 高信頼性を要求される車載用途の水晶振動子においてもコストダウンは求められ、コストアップを最小限に抑える必要がある。そのため、既存の生産設備の利用を前提とし、ハンダ端子部の設計に斬新な工夫を加えることで、カーエレクトロニクス分野において要求される厳しい環境下での使用にも対応できる小型水晶振動子を実現した。
 カーエレクトロニクス市場は今後も進展することが予想されており、大真空は市場ニーズを適確にとらえ、さらなる小型化・低周波数化・低CI値化・高信頼性化などを進展させた水晶デバイス製品の開発を推進し、製品ラインアップを強化する所存である。