
はじめに
GPS (Global Positioning System)は、衛星を利用した24時間利用可能なナビゲーションシステムである。
1970年代にアメリカ政府の軍事用ナビゲーションシステムとして開発がスタートしたが、軍事と民生の共用を考えたナビゲーションシステムに姿を変え、1993年に24時間利用可能なシステムとして正式に運用が開始された。
1990年代に入り、今では一般的となったカーナビゲーションシステムにGPSの採用が始まり、2000年にアメリカ政府が民生用GPS信号に誤差情報を入れ、故意に精度を落とす操作(SA:
Selective Availability)を廃止以降、測位精度は特別な補正技術なしに最大で10倍程度改善した。その結果、カーナビゲーション機器の簡素化、低価格化が進み、普及が加速された。
一方、2005年以降、低価格を武器に世界的規模で普及が進んでいる簡易型ナビゲーション機器にPND
(Personal Navigation Device)がある。また、携帯電話の世界では、アメリカのE911に代表される緊急時の位置情報通知機能の義務化を契機にGPS機能の搭載が始まった。現在では様々なアプリケーションが開発され、GPS機能を利用してPNDと同レベルのナビゲーション機能をサポートするものも存在する。ハイエンド携帯電話端末でのGPS機能の搭載率は世界的に上昇し、今後の市場の伸びも期待されている。GPSレシーバには、衛星からの微弱な電波を安定して受信回路するために、高精度な温度補償水晶発振器(TCXO)が使用される。
大真空は、同市場に高精度TCXOを供給しているが、拡大する同市場に着目し、TCXOの性能の改善に対する取り組みを継続してきた。今回、GPS関連機器の市場に特化したTCXOの開発を完了し生産を開始した。ここでは、GPS関連機器の心臓部であるGPSレシーバの技術的なトレンドを解説して、今回開発したGPS用TCXOの製品の特徴を説明する。
GPSレシーバ・モジュールの技術トレンド
GPSレシーバは衛星からの非常に微弱な電波を扱うため、ノイズ対策の点からもレシーバをモジュール化する場合が多い。GPSレシーバのトレンドを以下に示す。
@ 小型化
機器の小型化、機器への組み込みを考慮してGPSレシーバモジュールの小型化が進んでいる。モジュールの小型化は、レシーバを構成するICの小型化(RF-IC、BB-ICの2チップ構成からRF-ICとBB-ICをコンバインし1チップ化)。部品の削減(周波数のダウンコンバートをダイレクトコンバージョン化しIFのFilterを削減)。使用する部品の小型化(TCXOの小型化3225サイズから2520サイズへのシフト)などで対応。現在 □10mm以下のサイズまでモジュールの小型化が進んでいる。
A 低電圧化・低消費電流化
レシーバモジュールの低消費電流化、電源回路の簡素化を目的に、モジュールの低電圧化を進めている。GPSは送信回路を持たないため、比較的早い時期からICの低電圧化が進められてきた。
+5V/+3.3V(2電源)→+3.3V→+3.3V/+1.8V(2電源)→+1.8V
以上のようなステップを経て、現在ではモジュールを構成する全てのデバイスが+1.8Vで動作可能となり、+1.8V単一電源での動作が可能である。
B 高感度化
携帯電話では、屋内(窓から5m程度のエリア)での利用も考慮する必要があり、高感度化が必要である。
-160dBm程度の微弱な信号下でも衛星のトラッキングが可能なものもある。
C 高精度化
測位精度の改善も重要な課題である。特別な補正技術なしで、より高精度な測位が要求される。
D 高速TTFF化
電源投入後、測位可能状態となるまでの時間(TTFF:Time
To First Fix)を短縮することが要求されている。
ホットスタート時(有効な航法メッセージを持っている場合)のTTFFを高速化する技術が必要である。
大真空のGPS用TCXO
大真空では、GPSレシーバのトレンドをキャッチアップして、GPSレシーバの性能をさらに改善することを目標にリファレンスオシレータとして使用されるTCXOの性能の改善に取り組み、GPSレシーバに最適化した高精度TCXOの開発を行った。
以下に今回開発したTCXO DSB221SDA(外形寸法:2.5×2.0×0.8mm)/DSB321SDA(外形寸法:3.2×2.5×0.9mm)の特徴と製品の性能を紹介する。

DSB221SDA/DSB321SDA
@ 小型化
GPSレシーバモジュールサイズの小型化に適応するために、TCXOの小型化を進めた。現在、主力製品である3225サイズの製品に加え、2520サイズ
(パッケージサイズを4桁の数字で表記、2520は2.5×2.0mmを示す)
へと小型化を進めた。(図1)

A 低位相ノイズ化
周波数と時間のリファレンス信号となるTCXOの位相ノイズ特性を改善した(図2)。位相ノイズ特性を改善することによりGPSレシーバの高感度化、高精度化に対応した。

B 低電圧化
GPSレシーバを構成するICの低電圧化に対応するために、TCXOの動作電圧の低電圧化を行った。+1.8Vで動作可能な仕様とした(+1.7V〜+3.6V範囲の任意の電圧で動作可能)(図3)。

C 高精度化
TCXOの周波数温度補償精度を改善した。周波数温度特性を高精度化することにより、周波数が温度に対して変化する特性(周波数スロープ特性)が改善し、測位中のTCXOの周囲温度の変化に対する周波数のドリフトが改善される(図4)。TCXOの周波数偏差の狭偏差化により、電源投入後に衛星から送信される電波を受信する際のキャリアサーチレンジを狭く設定出来るため、GPSレシーバのTTFF性能が改善する。
また、温度の変化に対する周波数のドリフト性能の改善によりGPSレシーバの受信感度、測位精度が改善する。

D スタンバイ機能
スタンバイ制御信号でTCXOに供給する電圧を遮断しTCXOをスタンバイ状態にする機能を内蔵した。パワーダウン制御信号でGPSレシーバモジュールのパワーダウンを行う場合、従来TCXOの電源制御は、LDO(低ドロップアウト・レギュレータ)を介し行われていた。スタンバイ機能を内蔵することにより、LDO等のパワー制御デバイスも不要となり、回路の小型化、部品点数の削減が可能である。LDOと周辺部品で4点程度の部品削減が可能となる(図5)。

E 電気的性能
代表的な電気的性能を表1に示す。

今後の展開
GPS関連機器の市場は今後大きく拡大することが予想されている。GPSレシーバの機能モジュールには、今後より一層の小型化/高性能化/低価格化が要求されている。
大真空では、今後も継続してGPS市場のデマンドをキャッチアップして、カスタマーの視点に立った商品をタイムリーに提供できるよう活動を続けて行きたい。

