技術情報
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2007年12月13日号 電波新聞『ハイテクノロジー』掲載

特集 高周波部品とモジュール技術

多機能温度補償水晶発振器モジュールの技術

 はじめに

 携帯電話の多機能化に伴い、携帯電話を構成するデバイスが増加し、セットを小型化することを目的に、デバイスの小型化を望む声は大きい。大真空は、携帯電話に無線周波数のリファレンスオシレータに使用される温度補償水晶発振器(TCXO)を供給しているが、TCXOの開発トレンドのメインストリームも同様に小型化をターゲットとしたものである。
 過去10年の小型化に対する動きを見ると、7050サイズ(パッケージサイズを4桁の数字で表記、7050は7.0mm×5.0mmを示す) →5032サイズ→4025サイズ→3225サイズ→2520サイズと、実に面積でおよそ1/7、容積では1/14程度と大幅な小型化が進んでいる。今後の小型化に関しては、2016サイズの商品化が計画されているが小型化に対する効果は徐々に薄れつつある。大真空では、デバイスサイズの小型化と並行して携帯電話の周辺回路をTCXOに内蔵することで、セットの小型化により効果がある多機能温度補償水晶発振器モジュール(多機能TCXOモジュール)を2002年から開発、生産を継続している。最初のモデルはPDCに特化した5032サイズの製品で、2つのTCXO周波数出力と1つのIF用9てい倍周波数出力を内蔵した。2004年には、W-CDMA CDMA2000をターゲットとした、2つのTCXO周波数出力とアナログ温度センサーを内蔵した3225サイズの多機能TCXOモジュール 「DSA322MA」の供給を開始した。
 そして今回、「DSA322MA」の後継機種として「DSA322MB」を開発した。
 「DSA322MB」は3225サイズで3つの周波数出力とアナログ温度センサーを内蔵した(図1)。ここでは「DSA322MB」を開発した技術的背景および、その性能を紹介する。

   多機能TCXOモジュール

 携帯電話は、その機能の増加と電話機の小型化をトレンドに進化を続けている。この進化を支えているのは、デバイスの小型化、機能のモジュール化、機能ICのコンバイン等による電話機の小型化技術である。大真空では携帯電話の回路基板上でTCXOの出力信号が複数のデバイスに供給され、信号間のアイソレーションの確保や供給先が必要とする信号レベルに変換することを目的としたバッファアンプが基板上にレイアウトされていることに着目した。また一部の機種では、無線周波数のパワーアンプのGainの温度補償やLCDの温度補償に使用することを目的に、アナログ温度センサーICを使用している。
 大真空では、これら機能を内蔵することにより、TCXOの小型化よりさらに大きなスケールメリットのある小型TCXO機能モジュール(多機能TCXOモジュール)の開発を行っている。

  内蔵した機能

 ①  3つの周波数出力

 今回の製品では、従来機種に対し周波数出力を1つ増やし3つの周波数出力とした。通常のTCXOを使用した場合、TCXOの出力信号は回路基板上のバッファアンプを経由して無線部(PLL回路)/ロジック回路部等へ供給される。本TCXOモジュールでは、出力ごとに異なった電源電圧で動作が可能な専用のバッファアンプを内蔵した3つの周波数出力を実現した。TCXOの外部にバッファアンプを構成した場合と比較して、消費電流削減/デバイス実装面積の削減に対し大きなメリットがある。出力1は、無線部(PLL回路)へのクリップドサイン波出力で、外部制御端子により信号のENABLE/DISABLE制御が可能な、省電力制御が可能な構成とした。出力2、出力3はCMOSロジックレベルを必要とするデバイスに対するクロック出力でCMOSバッファアンプを内蔵した。
 ベースバンドの信号処理用CPU/DSP等へ直接クロックを供給することが可能である。これらのCMOS出力は、CMOSバッファアンプへの電源供給部をそれぞれ独立した回路構成とすることにより、異なる電圧で動作可能な構成とした(+1.4V~+3.3Vの範囲で対応)。
 たとえば、出力2をBluetooth用クロック(+1.8V動作)、出力3をDSP用クロック(+2.8V動作)の様な構成で動作することができる(図2)。

 

 ②  アナログ温度センサー出力

 アナログ温度センサーの機能をIC上にレイアウトした。アナログ温度センサー出力は、無線部パワーアンプのGainの温度補償に利用される。また、LCDコントラストの温度補償等への利用も可能である。通常、温度センサーの機能は、専用の温度センサーIC/チップ型NTCサーミスタ等により構成されるため、消費電流削減/デバイス実装面積削減の面でメリットがある(図3)。

  外観/構造

 DSA322MBは、これらの機能を新しく開発したICに凝縮し、10端子のLCC構造のセラミックパッケージに収納した。3.2 × 2.5mm × 1.0mm max.(3225サイズ)のモジュールサイズで実現した(図4)。

 構造面では、ICチップを水晶片と同一キャビティ内に配置した、一体型構造(Single-packaged structure)を採用。製品の低背化を実現した(図5)。ICの実装には、一体型構造デバイス用に開発した特殊なフリップチップ実装技術を採用した。接続部および、材料に鉛を使わない完全鉛フリーデバイスである。

  電気的性能

 代表的な電気的性能を表1に示す。周波数は、19.2MHz/ 26MHzを標準周波数とした。

  多機能TCXOモジュールを使用するメリット

 ①  実装面積

 デバイスの実装面積を大幅に削減することができる。本モジュール内に、温度センサー/バッファアンプを内蔵しており、デバイスの実装面積を大幅に削減可能である。2520サイズ(2.5×2.0mm)のTCXOを使用して本モジュールの温度センサーを含んだ機能をすべて外部回路で構成した場合と比べ、実装面積を約46%、バッファアンプの機能のみを使用した場合でも41%程度削減可能である(0603サイズの外部C/Rを含んだ参考値)。

 ②  消費電流

 従来、複数のデバイスで構成されていた機能を1つのICに集約したことによるリーク電流の削減効果、内蔵バッファアンプの出力制御機能等を活用することによる電流削減効果により、本機能を複数ICとディスクリートデバイスで構成した場合と比較すると消費電流の削減可能である。
 削減効果に関してはカスタマーの使い方に依存するため、ここでは言及しない。

 

  今後の展開

 携帯電話端末メーカー各社は、独自の観点で端末の小型化/小電力化を進めている。
 「DSA322MB」の機能を活用することにより、部品点数を削減できることは明白であるが、消費電流の削減に関しては、カスタマーのシステム設計に依存する要素の多く持つ。
 そのため、大真空では、携帯電話端末メーカーの要求に応じ、多機能TCXOを100%活用していただくために、キメ細かなカスタマーサポートを行っている。
 大真空は、今後も市場のトレンドを分析し、カスタマーの視点に立った商品をタイムリーに提供できるよう活動を続けている。