技術情報

2005年12月1日(木) 電波新聞『ハイテクノロジー』掲載

<高周波部品技術>

小型SMD温度補償水晶発振器の最新技術

【はじめに】

移動体通信機器である携帯電話は、手軽な情報端末機器として、ますますその機能に磨きをかけている。新しい機能をどんどん取り込み、高機能化という進化を続けているが、それと同時に利用者である私たちは、より小型化(薄型化)、軽量化と高機能化はトレードオフの関係にある性能を求めている。その結果、携帯電話の設計エンジニアは機能のICへの組込みを進めるとともに、より小型でレイアウト設計の自由度の高いデバイスを求めている。大真空は、移動体通信機器用に無線部のキーデバイスである温度補償水晶発振器(TCXO)を供給しているが、市場の要求に対応し、より小型の商品開発に取り組んでいる。このたび、移動体通信機器向けの無線部リファレンスオシレータとして2520サイズの小型TCXO「DSA221SAシリーズ」を、携帯電話等に内蔵可能なGPSレシーバのリファレンスオシレータとして高精度3225サイズのTCXO「DSA321SDシリーズ」を開発した。 ここではこれらのTCXOの性能、小型化に際し考慮した点を技術的に説明する。

【2520サイズ小型TCXO】

「DSA221SAシリーズ」の外形寸法は2.5_2.0_0.9mm max. 容積は0.0045cc(容積比45%減、3225サイズとの容積比)の移動体通信機器のリファレンスオシレータとして開発した小型TCXOである。(図1) シングルパッケージ構造を採用し小型化を実現した。シングルパッケージ構造は他の構造と比較して、より小型のICが必要となる。今回、小型ICを新たに開発することで2520サイズのTCXOを実現した。周波数温度安定度は±2.0_10-6/-30℃~+85℃に対応した。(表1)

DSA221SAの外観図
【図1】DSA221SAの外観図

【表1】DSA221SA/ DSB221SA電気的特性
型名 DSA221SA(VC-TCXO)/ DSB221SA(TCXO)
出力周波数範囲 13MHz/ 14.4MHz/ 19.2MHz/ 19.68MHz/ 26MHz
出力周波数 9.6MHz~40MHz
電源電圧 +2.8V(電源電圧 +2.4V±0.1Vまで対応可能)
消費電流 +1.1 mA max. (F≦15MHz)
+1.3 mA max. (15 +1.5 mA max. (F>26MHz)
TCXO出力電圧 0.8Vp-p min.
TCXO出力負荷 (10kΩ//10pF) ±10%
周波数常温偏差 ±1.5×10-6(After 2 reflows)
周波数温度偏差 ±2.0×10-6/-30℃~+85℃
周波数電源変動 ±0.2×10-6/(+2.8V±0.2V)
周波数負荷変動 ±0.2×10-6/(10kΩ//10pF)±10%
周波数可変範囲
(DSA221SAの場合)
±9×10-6~±15×10-6  Vcont=+1.5V±1V  (GSM)
±5.5×10-6~±9.5×10-6  Vcont=+1.4V±1V  (CDMA)
エージング特性 ±1.0×10-6/year
起動時間 2.0msec max.
上記仕様は、標準仕様の一部。上記以外仕様外は別途ご相談ください。

【3225サイズ高精度TCXO】

 「DSA321SDシリーズ」は、シングルパッケージ構造の3225サイズ高精度TCXOである。 外形寸法は3.2×2.5×1.0mm max. 容積は0.008cc(容積比60%減、5032サイズとの容積比)のGPS/業務用無線通信機器向けのリファレンスオシレータとして開発した高精度TCXOである。(図2) 周波数温度安定度は ±0.5×10-6/-40℃~+85℃に対応した。(図3)「DSA321SDシリーズ」は、移動体通信機器に組み込まれるGPSモジュール等の小型化に有効な製品である。米国E911に代表される移動体通信機器からの位置情報通知機能の日本国内および、ヨーロッパでの導入の動き、テレマティクス等、車の位置情報通知機能、ナビゲーション機能など、今後拡大が予想される同機器が市場である。

以下に、今回開発したTCXOに採用した技術の特徴、技術的背景を示す。
DSA321SDの外観図
【図2】DSA321SDの外観図

DSA321SDの温度特性
【図3】DSA321SDの温度特性

【シングルパッケージ構造】

シングルパッケージ構造は、大真空が5032サイズ、3225サイズで展開してきたテクノロジである。製造技術面では高い技術レベル、管理レベルが必要であるが、製品の低背化が容易である、トータルアセンブリタイムの短縮が可能である等の大きなメリットがある。ICの実装には、シングルパッケージ構造用に開発した特殊なフリップチップ実装技術を採用している。接続部および、材料に鉛を使わない完全鉛フリーデバイスである。(図4)

シングルパッケージ構造
【図4】シングルパッケージ構造

【小型ICを開発】

TCXOの小型化に必要なICの小型化に取り組み大幅な小型を実現した。性能は維持し、面積比で34%減の小型化を実現した。

【熱設計を改善】

TCXOの基板上でのレイアウト設計の自由度を改善するために熱設計を改善した。TCXOがパワーアンプ等の発熱量の大きいデバイスの近くにレイアウトされた場合にTCXOの温度が急激に変化し、周波数が一時的に変動する現象が発生する。これはセラミックパッケージに内蔵されるX’tal Blankの温度とIC-Chip上の温度センサーが検出する温度にズレが生じ温度補償Errorが発生することが原因である。セラミックパッケージとX’tal Blank、セラミックパッケージとIC-Chip間の熱抵抗を合わせることにより、この現象を低減することが出来、発熱量の大きいデバイスの近くにTCXOをレイアウトすることが可能となった。(図5)

温度補償エラー改善
【図5】温度補償エラー改善

【ハーモニックス性能を改善】

TCXOの基板上でのレイアウト設計の自由度を改善するために無線性能に影響を与える出力信号の高次ハーモニックスを低減した。(図6)TCXOの出力信号の高次ハーモニックスは携帯電話の受信時の通話品質、GPSの受信感度等に影響を与える。特に低レベルの信号を扱うデバイス、信号ラインに対し影響を与え、TCXOのレイアウトの自由度が制限される原因となっていた。TCXOの出力信号の高次ハーモニックスを回路レベルで改善することにより、基板設計時のTCXOのレイアウトの自由度を改善し、セットの小型化を可能とした。

DSA321SDの温度特性
【図6】ハーモニックス改善

【低電圧動作に対応】

ICの内部動作電圧の低電圧化を行い、動作電源電圧の低電圧化に対応した。 電源電圧 +2.4V±0.1Vでの動作を可能とした。動作電圧の低電圧化により、セット全体の低消費電力化を実現することが可能である。

【防湿梱包管理が不要】

防湿梱包管理を不要とすることにより、デバイスの取り扱いを容易とした。 防湿梱包は樹脂等の吸湿する材料をデバイスの大気にふれる部分に使用している場合に必要である。大真空のTCXOは、シングルパッケージ構造で吸湿材料を排除し防湿梱包管理が不要な構造とした。防湿梱包管理レベルはJEDECのJ-STD-033で規定しており、大真空のTCXOのMSL(Moisture Sensitivity Level )はMSL=1(防湿梱包が不要)である。 シングルパッケージ構造以外のTCXOはMSL=3(防湿梱包管理が必要)である。

【今後の展開】

今回、TCXOの小型化、高精度化への対応を進めるに当たり、実際に使用されるシチュエーションを想定し、カスタマーの立場に立って使いやすいデバイスを目標に設計を進めた。 大真空では、今後も市場のトレンドを分析し、カスタマの視点に立った商品開発を進めていく。 今回紹介した製品の詳細情報は、大真空のホームページ http://www.kds.info/ で確認いただきたい。