技術情報

2005年7月14日(木) 電波新聞『ハイテクノロジー』掲載

<フィルタ/水晶デバイス技術特集>

SMD型水晶振動子の小型化技術

【はじめに】

最近の移動体通信機器の高機能化や、デジタルチューナ、デジタルカメラなどに代表される小型電子機器の発展に伴い、電子デバイスの高密度実装が必須となり各部品の小型化が進んでいる。回路のアプリケーションでは主に基準信号源として使用されることが多い水晶振動子も、さらなる小型化が要求されている。 発振回路などの回路上では発振周波数と消費電流が比例関係にあることから、消費電力を抑えるため高い周波数よりも低い周波数の方が有利である。しかし、ATカットを使用したMHz帯水晶振動子は小型化に伴って水晶片も小さくなることから低い周波数の対応が困難になる。そのため、小型で低い周波数、低インピーダンスの水晶振動子をいかに実現するかがひとつの課題である。ここでは小型・低周波対応を可能にした技術とその製品であるSMD型水晶振動子について述べる。

大真空製SMD型水晶振動子の型名と対応周波数範囲
【図1】大真空製SMD型水晶振動子の型名と対応周波数範囲

【小型・低周波対応化技術】

SMD型水晶振動子のサイズと対応周波数の関係を図1に示す。8045サイズと2520サイズを比較した場合、8045サイズの方が低周波数対応およびインピーダンス特性ともに優れていることが明らかである。これは、小型化することによりパッケージ内部に搭載する水晶片が小さくなるため、良好なインピーダンス特性の確保が困難になる。また、水晶片の微細加工技術にも限界があるためである。これらの問題を解決するために、限られた外形サイズの中で、いかに水晶片搭載エリアを広く確保し、大きな水晶片を搭載するかがポイントとなる。
パッケージの内部キャビティを広くとり、大きな水晶片を搭載するには、パッケージの封止工法が非常に重要である。SMD型水晶振動子の封止工法としては、シーム溶接封止、低融点ガラス封止、Au-Sn封止などが挙げられる。3225サイズ以下では、シーム溶接封止が主流であるが、様々な検討の結果、大真空では小型・低周波に対応するには低融点ガラス封止が最適と判断し採用している。低融点ガラス封止の特徴と小型化に対するメリットを内部キャビティ、生産性、機械的強度、環境対策の点で述べる。

(1)内部キャビティ
低融点ガラス封止によるキャップ形状は従来の凹型が主流であった。しかし、平板型にすることにより、ベースの側壁を薄くしても低融点ガラスによる接合部の強度を保つことが確認された。ベースの側壁を薄くできることから、内部キャビティを広く確保できる低融点ガラスと平板型キャップ形状による封止工法を採用した。これにより大真空では業界最大サイズの水晶片の搭載が可能となった。

(2)生産性
シーム溶接封止は個別処理が必要であるが、低融点ガラス封止はバッチ処理が可能である。また、シーム溶接封止設備の機構は極めて複雑であり、かつ高価であるが、ガラス封止の設備は単純な連続炉であり、価格、生産能力共に優れている。すなわちコスト的にも優れた封止工法である。

(3)機械的強度
従来の低融点ガラス封止はシーム溶接封止と比較し、基板曲げ強度で劣っていた。これは接合部がガラスという脆性質のため、パッケージサイズが大きく裏面パッド間隔が広い場合、シーム溶接封止と比較すると基板曲げ強度が小さい値となるためである。大真空ではキャップ形状を従来の凹型から平板型にし、基板と接合部の距離をとる。なおかつ図2に示すように、独自の技術により製品内部に封止ガラスのインナーメニスカスを形成することにより接着強度を上げ、実用上全く問題のない基板曲げ強度および耐衝撃性を得ており、シーム溶接封止と同等の強度である。

ガラス封止のインナーメニスカス形状の断面イメージ図
【図2】ガラス封止のインナーメニスカス形状の断面イメージ図
(4)環境対策
低融点ガラス封止では封止材のガラスにPbが含まれているが、電子部品の封止ガラス材に含まれるPbはRoHS指令対象外物質であり適応除外(RoHS指令対応品)である。しかし、完全Pbフリー製品を望む声も少なくないため、大真空ではPbフリーガラス封止を開発し現在量産対応している。

【小型・低周波SMD型水晶振動子】

  上記技術により開発した製品がDSX321G(3225サイズ)である。アプリケーションによっては3225サイズよりさらなる小型化の要望がある。そのためDSX321Gの設計コンセプトを引き継ぎ、さらに小型化した製品がDSX221G(2520サイズ)となる。外観図を図3に、標準仕様を表1に示す。以下に各水晶振動子の特徴を述べる。

【表1】DSX321GおよびDSX221G 標準仕様
DSX321GおよびDSX221G 標準仕様

(a)DSX321G (b)DSX221G
【図3】DSX321GおよびDSX221G外観図

(1)DSX321G (3.2x2.5x0.75mm)
・対応周波数
周波数は9.8MHz~の対応が可能であり、この低周波対応レンジは業界1である。一例として、RKEに使用される9.84375MHzの温度特性を図4に示す。3225サイズ9.8MHz帯でインピーダンス特性が60Ω台であり、極めて良好な特性を示している。
・周波数可変感度特性
大きな水晶片を搭載できるということは、周波数可変感度特性においても大変有利である。一例としてDSX321G 26MHzの周波数可変感度特性を図5に示す。シーム溶接封止タイプの5032サイズ(弊社DSX531S)と比較しても差のない特性を示している。

(2)DSX221G (2.5x2.0x0.75mm)
・対応周波数
DSX321Gと比較し体積を約38%削減しつつも周波数は16MHz~の対応が可能である。こちらも2520サイズにおける低周波対応レンジは業界No.1クラスである。現在では14.31818MHzもサンプル対応中であり、さらなる低周波帯への拡張を検討している。
DSX321G 9.84375MHz 温度特性
【図4】DSX321G 9.84375MHz 温度特性

DSX321GとDSX531S 26MHzの周波数可変感度特性
【図5】DSX321GとDSX531S 26MHzの周波数可変感度特性

【小型・低背型SMD型水晶振動子】

水晶振動子の小型化の要求に対して、実装面積を小さくすることに主眼をおいて述べたが、体積として小型化の要求に対応するために、低背型を目的とした製品もラインアップしている。この低背型製品では、ガラス封止工法を採用しないで、真空シーム溶接封止を採用した。高さは0.5mmTyp.で0.55mmMax.を実現した製品として3225サイズSMD型水晶振動子「DSX321SL」(3.2x2.5x0.5mm)および2520サイズSMD型水晶振動子「DSX221S」(2.5x2.0x0.5mm)がある。これらは小型・特に低背型でありながら、さらなる低インピーダンス特性が要求される市場向けに対応している。

【今後の展開】

電子部品に対する要求は小型化だけでなくコストも年々厳しくなってきている。今回紹介した製品は、小型化しつつも電気的特性や高信頼性を確保し、また、従来からある工法を最適化しているため、コストを最小限に抑えたものである。
今後のさらなるアプリケーションの発展のため、大真空では市場ニーズを捉えた、特に低周波帯を意識した製品を拡充させて行く。

また、さらなる小型化水晶振動子の要求にお応えするべく開発を行っているので、ご意見、ご要求をいただきたくお願い申し上げたい。