
2005年3月3日(木) 電波新聞『ハイテクノロジー』掲載
<移動体通信用部品技術>
水晶発振器の技術動向
移動体通信用水晶発振器としては、従来から周波数制御を行なうPLLの基準に使用されるVC-TCXOがあり、携帯電話が主な市場になっている。近年、携帯電話は多機能化が進んでおり、アプリケーションプロセッサーやカメラモジュールなどが高密度実装される。また、これら機能に必要なクロックの供給源として、SPXO(Simple Package Xtal Oscillator)やVCXO(Voltage Control Xtal Oscillator)の搭載例も増加している。これら移動体機器に搭載される水晶発振器に求められるニーズは、小型化とともに、低消費電流、低電圧動作、高周波対応である。今回は、専用の発振回路(IC)と、AT基本波モード高精度水晶振動子技術によって実現した移動体通信機器用の水晶発振器を紹介する。
【SPXO】
SPXOは水晶振動子と発振回路を1つのパッケージに収めた製品で、発振回路の設計や回路バラツキを考慮する必要がなく、安定な周波数信号を得ることができる。表面実装対応は、7050サイズから始まったが、その後小型化が進み、現在では2520サイズの量産も行われている(図1)。表面実装型の水晶発振器は、容積比にして10分の1以下の小型化が実現しているが、小型化にはいくつかの課題を克服する必要がある。例えば、既存の設計技術では小型化することで振動子の損失(抵抗値)が大きくなり、発振起動の信頼性が低下する。また、小型振動子を設計する際に発生する不要モード共振の抑制などである。これらの解決手法をさまざまな角度から探るのが、設計者の仕事となる。
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| 【図1】SPXOのサイズと、面積容積比率 |
【基本波モード水晶振動子による高周波対応】
1MHz以上の発振器の水晶振動板(水晶素板)には、ATカットモードが用いられ、この振動板の共振周波数はその厚みに反比例する。たとえば40MHzの基本波振動子の場合その厚みは42μm程度まで薄くなるため、低コスト品の加工限界とされ、40MHz以上の周波数では3倍の厚みが使用できる3rd振動モードが採用されてきた。しかし、このモードは振動子が小型になると損失が大きくなり発振起動の信頼性が低下し、回路の消費電流が大きくなる欠点がある。3225サイズSPXOでは基本波モード水晶振動素板を採用し、薄板になる高周波水晶振動子を独自の研磨技術によって高精度に実現する工法を開発して、150MHz(厚み11μm)まで低コストで供給可能となった。
【専用ICと基本波モード振動素板による省エネルギー設計】
基本波モードの超小型水晶振動素板を最適条件で発振させるために、専用のICチップを開発した。このICチップは最適な電力で水晶振動板を発振させることができる。この2つの新開発部品により、消費電力を従来機種の5分の1以下にすることができた(図2)。また、動作電源電圧は1.8Vから3.3Vの対応が可能になった。
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| 【図2】消費電流の比較 |
【信頼性の高い基本構造を採用】
3225サイズ、2520サイズともに、従来からの実装構造であるワイヤボンディング工法を採用している(図3)。この構造は7550サイズで確立したもので、水晶発振器としては最も実績があり信頼性も高い構造である。また、組み立て工程を容易にし、信頼性でも高い性能を確保するため、収納する部品も小型化した。例えば、ワイヤーリング面積確保のためにICプロセスルールを小さくした超小型チップの採用や、2520サイズでは低背化の実現のためにICの薄型化などである。いずれも、最新の高密度実装ICチップの技術を用いたもので、新しいIC技術と実績のあるワイヤボンド工法をマッチさせることにより、信頼性を確保した。この結果、組み立てラインの大半に従来機種の設備が流用でき、柔軟な生産対応と、少ない設備投資によりコストのアップも抑えることが可能になった。
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| 【図3】4サイズ共通の内部構造(ワイヤボンド実装+シーム封止) |
【超小型VCXO】
VCXOはコントロール電圧により、発振周波数を微調整できる機能をもつ水晶発振器である。用途はこれまで高速通信やデジタル映像の限られた分野であったが、携帯電話にカメラが実装されるなど、映像データの入出力が必要になるとともに搭載例が増加し、同時に小型化も求められている。VCXOはSPXOと比べて小型化が遅れているが、3225サイズ製品も出てきて高機能の携帯電話などで採用されている。VCXOに使用する振動板は、周波数変化量が大きい特性をもつ基本波モードを採用する必要がある。また、水晶振動素板やパッケージからなる構造はSPXOと共通部分が多いため、小型のICチップを採用することで3225サイズの設計は可能になる。この他、VCXOの小型化で問題になるのが、小型振動子でも十分な可変幅を確保することである。3225サイズの場合、5032サイズの27MHz製品と比べて約70%の可変幅になるが、DSV321SVでは±100×10-6の可変量を(図4)、74MHzでは5032サイズとほぼ同等の可変量の確保も可能である(図5)。振動子を駆動するドライブレベルの適正化と、ICチップと特性をマッチングさせることで改善が図られた。
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| 【図4】VCXOのサイズと周波数可変特性 |
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| 【図5】DSV321SV、周波数可変特性 |
【まとめ】
3225、2520サイズのSPXOとVCXOを紹介したが、共通する特徴は低電力動作、高周波対応、高信頼性である。また、これらの基本的な性能は従来の7050や5032サイズの性能を上回る。これを実現したのは、高精度基本波振動板とこれを最適条件で発振させる発振回路(ICチップ)である。これらの代表的な仕様を表1、2に示す。SPXOは3225サイズと2550サイズが共通の仕様になっており、動作電圧は1.8Vから対応でき、3.3V動作では周波数は150MHzまで対応することができる。VCXOでは3225サイズで90MHzまで対応できること、そして最新のICを用いた低消費電流が特徴である。100MHz以上の高周波発振器を設計する手法は、水晶発振器をPLL回路で逓倍する方法、SAW共振子を用いる方法などがある。だが、PLLの場合はジッタ特性に、SAWの場合は周波数の温度変動特性と小型化に課題を残す。今後も当社が得意とする、高周波ATモード水晶振動板の加工技術と、その性能を発揮させる周辺技術を組み合わせることによって、市場のニーズを捉えた商品を送り出す所存である。
【表1】DSO321SV、DSV221SV特性仕様
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【表2】DSV321SV、特性仕様
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