技術情報

2004年3月4日(木) 電波新聞『ハイテクノロジー』掲載

特集 移動体通信用部品技術

多機能温度補償水晶発振器モジュールの技術

はじめに

移動体通信機器としての携帯電話は音声通話機能に加え、インターネット接続機能、E-Mail 機能、GPS 機能、カメラ機能、動画録画再生機能等の付加機能の増加、大型カラー液晶採用等のユーザーインターフェイスの変化により携帯電話を構成する部品点数は大幅に増加している。また、これらの変化に伴う消費電力の増加がバッテリーの大容量化に拍車をかけている。そのため、携帯電話に使用されるデバイスに要求される性能として、デバイスの小型化、小電力化を望む声は大きい。
大真空は、移動体通信用携帯端末に無線信号部のキーデバイスである温度補償水晶発振器(TCXO)を供給しているが、2002 年から従来の小型化の商品開発に加え、携帯端末のTCXO 周辺の回路を取り込んだ、付加機能を内蔵したTCXO(多機能TCXO モジュール)の商品開発に取り組み、製品を供給している。
このほど、国内PDC 端末用に供給しているTCXO モジュール「DSA537MA」に加えW-CDMA、CDMA2000、GSM、PDC などのすべての通信システムに対応した3225 サイズTCXO モジュール「DSA322MA」を開発し、その生産を開始した。
ここでは「DSA322MA」の性能、低消費電力化の技術について説明する。

多機能TCXOモジュール

携帯端末を構成する部品点数が増加している。部品点数の増加とセットの小型化という、相反する課題を解決する上で、周辺回路をTCXO に取り込む多機能化は一つの解である。多機能化のポイントは、TCXO に取り込む機能の選択を、そのメリットを定量的に判断して決定することにある。「DSA322MA」の開発コンセプトは「全ての携帯端末の小型化に貢献する」ことである。

内蔵する機能の選択

図1 多機能TCXO Module ブロックダイアグラム内蔵する機能を選定する際に、全ての通信シ
ステムのTCXO 周辺回路の評価を行い、共通
して使用される機能を抽出し、抽出した機能
を内蔵する事による効果の評価を行った。そ
して、「DSA322MA」の開発コンセプトに基
づき、周辺回路の小型化に有効な以下の機能
を選択し内蔵した。(図1)

1.2ポート周波数出力
TCXO の出力は通常、無線部のPLL シンセサイザーの基準信号の他にシステム制御用のDSP/CPU などのクロックとして使用される。
本モジュールでは、無線部用/クロック用の専用出力ポートを持ち、それぞれのアイソレーションを確保するためにBuffer Amp を内蔵した。出力波形は、無線部用はクリップドサイン(Output2)、クロック用はLogic 回路を直接駆動可能な矩形波(C-MOS レベル)とした(Output1)。対応周波数は、12.6MHz/ 13MHz/ 14.4MHz/ 19.2MHz/ 19.68Mz/ 26MHz を標準周波数とした。

2.出力制御
無線部用の出力(Output2)は、PLL 回路の間欠動作信号とリンクしてENABLE/DISABLE 制御が可能な出力制御端子を設けた。出力制御端子を持つことで、待ち受け時の低消費電力化に対応した。出力周波数が19.2 MHzの場合に、この機能を使って得られるTCXOモジュール単体の消費電流削減効果は約300uA である。

3.温度センサー出力
温度センサー機能を内蔵した。本モジュールの温度センサーは、無線部PA のGain の温度補償に利用される。また、LCD コントラストの温度補償への利用も可能である。

外観/構造

DSA322MA は、これらの機能を新しく開発したIC に凝縮し、10 端子LCC 構造の3.2 x 2.5mm x 1.0mm max.(3225 サイズ)のモジュールサイズで実現した。(図2)
構造面では、IC チップを水晶片と同一キャビティ内に配置した一体型構造(Single-packaged structure)を採用。製品の低背化を実現した。IC の実装には、一体型構造デバイス用に開発した特殊なフリップチップ実装技術を採用した。接続部及び、材料に鉛を使わない完全鉛フリーデバイスである。(図3)

図2 外観図
図2 外観図

 

図3 内部構造図
図3 内部構造図

多機能化のメリット

3225 サイズ(3.2x2.5mm)のTCXO を使用して本モジュールの機能をすべて外部回路で構成した場合と比べ、実装面積を約70%、消費電流を約35%(参考値)それぞれ削減可能である。

1.実装面積
デバイスの実装面積が大幅に削減され、セットの小型化が可能となる。温度センサー/バッファアンプを内蔵しており、機器に占めるデバイスの実装面積の削減が可能となる。これら内蔵部品を個別の部品として設計した場合と比較して、実装面積を約70%削減(3225 サイズ標準VC-TCXO を使用した回路構成と比較)することが可能である。

2.消費電力
消費電流が大幅に削減され、連続待ち受け時間の延長が可能となる。内蔵バッファアンプ(Output2)の出力制御機能により細かな省電力制御が可能である。この制御を有効に活用することにより、大幅な省電力設計が可能となる。
出力制御機能を使用しない場合においてもTCXO モジュール単体で、消費電流を約35%、出力制御機能を使用した場合においては約45% の削減(@19.2MHz 時、外部に配置するバッファアンプの電流値を2.5mA と想定)が可能である。実際は、次段回路の動作電流も出力信号Disable 時には削減されるため、さらに大きな削減効果が期待できる。
本モジュールの機能を全て有効に活用した場合、携帯端末の小型化/低消費電流化に大きく寄与することが可能である。代表的な電気的性能を表1に示す。

表1 代表的な電気的性能

本モジュールの適用例

「DSA322MA」をCDMA2000 1x に適用した事例を以下に示す。代表的なChipset メーカーであるQualcomm社製のMSM6000 シリーズを使用した場合の例である。MSM6000 シリーズでは待ち受け時の省電力化を行うために細かな省電力制御を行っている。待ち受け時の主なモードと「DSA322MA」の動作状態を表2 に示す。
また、電力制御用IC (PM6xxx ) には「DSA322MA」のOUTPUT1 に内蔵したバッファアンプと同等の機能を内蔵しており、通常TCXO 出力はPM6xxx を経由してMSM6xxx に接続される。「DSA322MA」を使用した場合は、PM6xxx 内蔵のバッファアンプを使用する必要が無く、その動作電流は減少する。また、TCXO モジュールからMSM6xxx への直接接続が可能となるため、部品レイアウトの自由度も向上する。

表2 待ち受け時の動作状態

今後の展開

端末メーカー各社は、独自の観点で端末の小型化/小電力化を進めるためにIC の統合化を進めている。「DSA322MA」の機能を活用することにより部品点数を削減できることは明白であるが、低消費電流化に関しては、カスタマーのシステム設計に依存する要素を多く持つ。そのため、大真空では、端末メーカーの要求に応じ、多機能TCXO を100%活用して頂くために、キメ細かなカスタマーサポートを行っている。
今回、TCXO モジュールの市場への展開を進める中で、国内外の端末メーカーと数多くの技術的なレベルでのつながりを持つことができた。大真空では、今後も小型化のトレンドに対応した商品開発に加え、カスタマーの視点に立った新たなトレンドの商品開発を進めていく。

3225サイズTCXOモジュール「DSA322MA」
3225サイズTCXOモジュール「DSA322MA」